さいたま の おっさん 多め
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(,,゚Д゚)己を信じる争いのようです川 ゚ -゚) ep.Ⅶ (完結)

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352282412/456-664/

 << ep.Ⅵ


456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:32:58.65 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

(,,゚Д゚)「……」


突きを躱し、斬撃を防いで、次の突きに合わせてこちらも攻撃する。
まるで作業のように淡々と、それらを繰り返した。

魔法が来たら、全方向に耳を澄まし、どこから攻撃が来ても対応できるようにする。


相手のエルフは気づいているのだろうか。
自分の攻撃が単調で、ほぼパターン化されていることに。


(,,゚Д゚)(一歩下がった。次は魔法か)


このまま疲れるまで防御に徹するのも戦術ではあるが、それではあまりに退屈である。

それに相手はエルフの一兵士として誇りを懸けて、それこそ、命を懸けてこちらに向かってきているのだ。


(#゚Д゚)「だったら……!!」

川; ゚ -゚)「っ……!?」


それに応えてやるのが礼と言うもの。



460 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:34:03.33 ID:nZQNyOzo0


シィが守った命なのになあ


463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:35:58.84 ID:+3xj7nt1O


(#゚Д゚)「らぁぁぁぁぁっ!!」


相手が一歩下がり、魔法を放とうとしたところへ一気に詰め寄った。

……範囲内。
ここで魔法は使えないし、こちらの視界を隠されることもない。


一気に決めるつもりで、その喉目掛けて剣を降り出す。
エルフは無理矢理後方へ倒れるようにして、剣を避けた。

ならば、と返す刃で今度は腕を狙う。
致命的な一撃でなくともよい。
例え有効な攻撃を与えられずとも、傷つけさえすればエルフも焦るだろう。


川; ゚ -゚)「っふ……!」


キィン、と甲高い金属音が響いた。
あの体勢のまま短剣で俺の攻撃を防ぐとはなかなかやる。


(,,゚Д゚)(だが―――)







464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:36:07.09 ID:tcaUXvNU0


熱いな



468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:38:07.40 ID:+3xj7nt1O


甘い。
今のは当たっても当たらなくともよい攻撃だ。

弾かれた剣を引き、一歩踏み込む。
攻撃を弾いて体勢を崩したエルフの懐に潜り込んだ。


(,,゚Д゚)「シッ―――!」


そのまま腹部へ突きを叩き込む。

ほぼ0距離からの攻撃。
普通のニンゲンなら、間違いなく躱せないだろう。


川; ゚ -゚)「ぐぅっ!?」


だが、エルフは身を捻らせて無理矢理直撃を免れた。
剣先はエルフの脇腹を浅く抉り、鮮血が飛ぶ。

もう少し深手を負わせたかったが、まあこれでも十分だ。
痛みは人を冷静にさせなくする。
エルフも同様のはず。
さて、これがどう転ぶか―――



473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:40:37.72 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


今まで防戦一方だったニンゲンが急に攻撃にでたと思えば、あっさりと一撃もらってしまった。
ぱっくりと裂けた腹からは血が溢れ出てくる。

この戦いが長引けば、自分の命が危ない。
だが焦って攻め続ければ今度は致命的な一撃をもらいかねない。
一方のニンゲンはこちらの攻撃を凌ぎ続ければかてるのだ。

何か、何かこの状況を変えられる一手はないのだろうか。


川; ゚ -゚)(魔法が通用すれば……)


しかし、魔法を無効化する仕組みがわからない。
それに、わかった所でその仕組みをなんとかすることが出来るだろうか。
相手には近接攻撃が通用しないというのに。


川 ゚ -゚)(落ち着け……。焦ったところで相手の思うつぼだ……)


今までの攻撃パターンはもう通用しないだろう。
それに下手に魔法を使ってもこちらの死角を増やすだけだ。


川 ゚ -゚)(ニンゲンへの攻撃に魔法を使うのは控えた方がよさそうだな……)



476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:42:24.48 ID:+3xj7nt1O


ニンゲンはまだ動かない。
こちらの動きを伺っているようだ。


川 ゚ -゚)(……なるほど。落ち着いている)


こちらの行動を分析し、冷静に対処していたのだろうか。
それに気づかず、ニンゲンに一撃お見舞いしてやることしか考えていなかった自分が少し情けない。
自分では落ち着いているつもりだったが、そうではなかったみたいだ。


川 ゚ -゚)(感謝しよう。痛みが私を冷静にさせてくれた)


腹の傷はそう深くないが、出血はなかなか止まりそうにない。
治癒の魔法を使いたいところだが、そんな素振りを見せたら、ニンゲンはすぐに斬りかかってくるだろう。


川 ゚ -゚)(攻めるしかないな)


強く一歩を踏み出し、間合いを詰めた。
ニンゲンは少しもどうじずにこちらを睨んでいる。



479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:44:20.36 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)(防御の構えをとると思ったが……まだ見るか)


さらに地を蹴り、ニンゲンの背後へ回る。
ニンゲンの目はしっかりと私の動きについてきていた。

もう一度、さらに背後に回り、一度後ろへ下がる。
その動きからも、ニンゲンは決して目を離さなかった。


(,,゚Д゚)「……」

川 ゚ -゚)(ふむ。よく見えているな)


かなり速く動いたつもりだったが、これでもまだ足りないらしい。
これだけではニンゲンに傷一つ負わせることはできないだろう。


川 ゚ -゚)(だが、穴を見つけたぞ)


今の行動はニンゲンが自分の速度についてこられるか試すことだけが目的ではない。

相手はこの戦争で常に前線に立っていた男だ。
ここ最近敗戦続きだった人間軍の前線にいたのならば、どこかしらを負傷していてもおかしくはない。
そう思ってどこか痛めてる様子はないか探ったのだ。



481 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:45:21.06 ID:ZXhWPmr00


逆効果か


482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:45:58.82 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)(右足を庇う素振りがあったな。何かで痛めたのだろう)


足の故障は、自分に取って願ったり叶ったりのチャンスだ。
あの様子では、自分の動きを目で追って把握することはできても、同じスピードで相対することはできないはず。


川 ゚ -゚)(……そこをつかせてもらうぞ!)

(,,゚Д゚)「!」


さっきよりも鋭い踏み込み。
ニンゲンは咄嗟に防御の構えを見せた。
こちらが攻撃してくると読んだあたりは、さすがだ。


川 ゚ -゚)(だが―――!)


間合いに入ったところで、上体を屈め、右足へと短剣を振り下ろす。



485 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:47:32.47 ID:+3xj7nt1O


(,,゚Д゚)「くっ……!」


予想通り、ニンゲンは体を捻りながら一歩下がり、攻撃を躱そうとする。
……右足が下がり、体重が右足一本にほとんど集中した状態で。


川 ゚ -゚)(好機……!!)


振り下ろす途中で軌道修正。
屈んだ上体を起こす勢いで、そのままニンゲンの首を狙う。

ニンゲンの反応はコンマ2秒ほど遅れている。
踏ん張りが利かず、上半身の動きが鈍っているのだ。


川# ゚ -゚)「はぁぁぁっ!!」


そのまま一気に短剣を振り抜いたところで、派手な金属音が響いた。



490 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:52:48.11 ID:+3xj7nt1O


(;゚Д゚)「……っぁ!?」


―――防がれた。
チャンスと思って振り抜いた短剣は男の腕に……いや、男のはめた腕輪に弾かれてしまった。
せめて腕に直撃してくれれば、もしかしたら片腕の機能も奪えたかもしれない。
機械化しているとはいえ、もとはニンゲンだ。
ニンゲンの科学とやらがどんなものかは知らないが、ある程度の衝撃を加えれば破壊はできるだろう。


川 ゚ -゚)(……今ので捕らえきれなかったのは痛いな)


だが、これでまだニンゲンと対等かそれ以上に戦えるのがわかった。
その証拠に、ニンゲンの顔には明らかな焦燥の色が浮かんでいる。

真っ二つに割れて落下する腕輪を見ながら、私は光明を見いだしていた。


川 ゚ -゚)(さぁ……反撃開始だ……!)



491 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:53:22.51 ID:nZQNyOzo0


おお
魔法か


492 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:54:52.75 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


(;,゚Д゚)(なんてこった……!)

焦りを、隠せない。

この戦い、最初は圧倒的に俺が有利だった。魔力を封じ、剣を飛ばした。
次に樹を倒す奇襲により右足を負傷し、一度、パワーバランスは均衡になった。
そして、先刻まで敵に傷を負わせ、追い詰めていたのは、自分だったのだ。
この戦闘、今まで俺が劣勢になることは無かった。

だが、その戦局が覆された。
俺がエルフに対し圧倒的優位を保てた理由――腕輪が壊れたのだ。

エルフを見る。
魔法を使う素振りは見せてない。

(;,゚Д゚)(腕輪が魔法を封じていたことは知らないのか……?)



493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:56:04.87 ID:bIn38nbHO


腕輪が防いでるって気付いてないんじゃね?


494 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:56:22.38 ID:+3xj7nt1O


希望的観測だ。
だが、この可能性は高いだろう。

もし敵がこの腕輪のことを最初から知っていたのなら、この戦闘が始まった時から狙ってきただろうし、
途中から気づいたにしても、腕輪が壊れた瞬間に、幾つもの魔法が俺の身を襲っているはずだ。

このエルフは、腕輪に気づいていないと考えるべきだ。


ならどう動くべきか……?
魔法が使えると悟られるのはマズい。
距離を置くと、先程の牽制、視界攻撃のために魔法を使われ、魔法が通じることに気づかれるかもしれない。

(,,゚Д゚)(右足がきてるが……捨て身の突撃と行くか!)

ギコは右足の機動力の低下を無視するために、跳躍してエルフに接近する。
速度、移動距離の調整ができないが、今は一刻も早く敵を三mに捉える必要があった。



497 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 01:57:41.61 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


川;゚ -゚)(なっ……!)

先程まで、焦っていたというのに、突如跳躍し、此方に迫ってくる男。
右足を負傷し、機動力が低下してる筈なのだが――守りは不利と判断したか。
此方から再び攻め入り、右足を重点に攻撃を繰り出す予定だったので、計算が狂う。

第一、短剣は、防御に適した武器ではない。
刃渡りも短く、強度も無い。何度も鍔迫り合いをする武器ではないのだ。

その短剣で、男の剣をいなす。

的確に、急所を狙った突き。
迅速に、退路を断つような振り。
不意に、意表を突き繰り出される格闘技。

男の、零距離での乱舞のような攻撃。



501 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:00:23.77 ID:+3xj7nt1O




突きが、頬を掠める。
振りが、肉を切る。
格闘が、骨を絶つ。

川;゚ -゚)(くっ……何だこの男……!急に凶暴になったぞ……!?)

川;゚ -゚)(このままでは危険だ、とりあえず距離を……)

だが、男の連撃がそれを許さない。

男は、攻めに全てを集中し、隙だらけである。
だがこの攻撃の嵐の中、女王には短剣を突き立てるのは愚か、蹴り一つ出す余裕も無い。
大きな跳躍には、筋肉の『溜め』がいる。
剣に追われ、必死に後ずさりながら命を保つのが今は精一杯だ。



502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:01:06.59 ID:+3xj7nt1O



ジリジリと追い詰められる。
激しい運動により、腹の失血も加速している。
短剣の刃も、4度目に男の剣を受け止めた時に砕け散った。

前から来る脅威から逃げ、後ろに、後ろにと逃げていると、何時の間にか、女王のすぐ後ろに、燃え盛る木々が広がっていた。

チリチリという熱を肌で感じる。

川;゚ -゚)(絶対絶命、という奴か……)

左足でステップするように接近してくる男。
右足を負傷させたことは、かえって男を高速化させていたのだ。
傷が無ければ、この男はもっと慎重に移動していただろう。

そして、疲れ知らずの機械の腕が、剣を構える。



504 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:03:22.49 ID:+3xj7nt1O



後ろに下がることはできない。
左右に跳ぶか?

いや、この男にそんな小細工は通じないだろう。
でなければここまで追い詰められることも無い。

女王は、本能的に、魔力を掌に集中させていた。
エルフの、生存本能である。
窮地に立ったニンゲンが、拳を握りこむように、エルフもまた、己に眠る力を手に集中させる。

理性では、魔法が使えないことは理解していた。
だが、追い詰められた本能が、それを越えた。

眼前に迫る剣を幻視した時――

女王は、魔法を放っていた。



510 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:06:45.79 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



(,,゚Д-)「がっ―――!!!!」

魔法の爆発が、剣に、腕に衝撃を与える。
剣がぶれ、軌道が歪む。

必殺の一突きが貫いたのは、燃え盛る樹だった。

(;,゚Д゚)(しまった―――!追い詰めすぎたか!!!)

魔法を使えないと思わせたまま、トドメを刺すための苦肉の策――捨て身。
途中までは効を成していたが、どうやらここにきて、裏目に出たようだ。

短剣も潰し、逃げる隙も作らせず、上手く追い詰めたが、失敗だった。
手足をもがれた蟻が、己の最大の武器である顎を思い出したかのように、噛み付いてきたのだ。

(;,゚Д゚)(マズイぞ!!魔法が使えることが分かればコイツは――)

樹から剣を抜く。

だが、ギコが再び剣を構えるより早く、灼熱の炎がギコを捉えていた。



514 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:10:10.92 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


川 ゚ -゚)(良く分からんが……どうやら魔法は使えるようだな)

掌に、今まで温存してきた、温存せざるを得なかった魔力を注ぎ込みながら、男と距離を取る。

自身でも意識せぬうちに放っていた爆発の魔法。
まさか通じるようになっていたとは思わなかった。


何故この男に魔法が効くようになったのか?
思い当たる節と言えば……どちらかと言うと防御に徹していた男が突如活発に攻め始めた転機。

――腕輪が壊れた時、か?

あの腕輪が媒体だったのか、それとも時間制限の別の何かだったかは分からないが、あの瞬間から男は焦り始めた。

正確な理由は分からないが、なにはともあれ

川 ゚ -゚)(形勢逆転……だ!!!)



519 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:12:14.13 ID:+3xj7nt1O


とはいえ、女王も腹の失血で体力を失っていた。
貧血、そして煙による酸素欠乏により、女王の視界は暗転する一歩手前である。
距離はとったものの、もう男の攻撃を避けることはできないだろう。

怯んだ男の足元を潜り抜け、十分な距離を取る。
そして、掌にこもる魔力。

掌から魔力で呼び起こされた紅蓮の炎が放たれる。
エルフの間で禁忌とされていた、女王も初めて放つ火炎の魔法だ。
その炎は火計のそれと比較にならぬほど広範囲に放たれ、高温で、蒼かった。

蒼い炎が、剣を引き抜いた男の身体を舐める。

女王の掌を焦がす程に燃え上がる炎。その炎は彼女の怒りを代弁するかのように、森の草木を更に破壊する。
どれだけ優秀な反射神経があっても、身体を包む炎には対処できない。

川 ゚ -゚)(さぁどうする!!逃げるか?炎を消すか?それとも――)



526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:14:46.39 ID:+3xj7nt1O


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


(,,゚Д゚)(進むしか、ねぇ!!!)

この炎をかわすのは無理だ。防ぐのも無理だろう。

なら、進んで、攻めて、炎の元を絶つしかない。
極めて合理的で、この状況でしうる最良の選択だった。

炎に包まれながら怯むことなく剣を盾のように構える。
だがその剣も、熱で溶けてゆく。

男はそれでも諦めない。
剣が無いなら、己の拳を武器とするのみ。


川;゚ -゚)(止まれっ!倒れろ!!諦めろ!!!)

膨大な汗をかきながら、震える手で照準をギコに合わせる女王。
この炎は女王が制御しきれない状態に、暴走状態に陥っていた。
怒りの炎は制御が利かず、彼女の腕をもその炎で包んでいた。この状態が続けば、彼女の身体も焼き尽くされるだろう。



529 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:16:27.02 ID:+3xj7nt1O


炎が足を溶かす。
男はそれでも止まらない。

炎が胴を焦がす。
男はそれでも怯まない。

炎が、首を舐める。
男はそれでも諦めない。

何故ギコは限界を超えている足を止めず、進むのか
何故女王は炎に耐え、魔法を放つのか

大義のためか?戦友のためか?平和のためか?贖罪のためか?

否――その何れでもない。ただ、男と女の、人間とエルフの、
目の前の『戦い』に勝つためだけの、『争い』。



女王渾身の、最後の炎が、男の顔を焼き尽くす―――


その寸前、



男の、鉄の拳が、女王の顎を捉えた。



533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:18:10.11 ID:+3xj7nt1O


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

川;  - )「が……っ……」

(%@ Д゚)「……」


エルフが倒れたのを見て、一息つく。
使用者が倒れたことで、ギコに纏わりついていた炎の魔法は消えたが、辺りは火の海だ。
このままここにいては、死ぬのも時間の問題だ。
だが、火が消えているであろう場所まで戻ろうにも燃え盛る火の中を通ることになる。


(%@ Д゚)(俺は大丈夫かもしれんが……このエルフが無事で済まないだろうな……)


退路はもう無い。
ならば、奥へと進むしかあるまい。

(;%@ Д-)「っ!?」

エルフを抱えて立ち上がると、右足で小さな爆発が起きた。
プスプスと黒い煙が出て、嫌な臭いが鼻腔を掠める。


(%@ Д゚)「……ちっ。俺も限界が近いか……」


ギシギシと錆びた音を立てながら、溶けかけた機械の足で、出来るだけ急いで歩を進める。
痛みも感じず、ただ命が削られていく感覚だけを感じながら。



538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:20:04.99 ID:+3xj7nt1O


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(*゚ー゚)『人間とエルフが仲良くしてる世界が、いつか訪れると思います』

(*゚ー゚)『十年先、百年先、いえ、もっと先でしょう。私達も生きていないと思います」』

(*゚ー゚)『そんな遠い未来かもしれないけど、きっと、訪れると思うんです』



(*゚ー゚)『ですから、女王様はまだ生きてください。あなたはその未来のために必要な方なのですから』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――ドサッ


川; ゚ -゚)「――――っ!?」


衝撃と共に目が覚めた。先ほどのシィは……夢か。
気を失ってしまったのか、ニンゲンは……?

(%@ Д゚)

……いた。
私のすぐそばで倒れている。
相打ちだったのか?ならば―――



541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:21:27.50 ID:+3xj7nt1O


そこまで考えたところで、違和感に気づいた。
……さっき戦っていた場所とは景色が違う。

ここは始原の世界樹のある―――?
なぜここに……?


(%@ Д゚)「気づいたか」

川; ゚ -゚)「!」


ニンゲンの言葉に思わず身構えた。
武器はない、魔法を放つための魔力も残っていない。
このままではやられる……?

しかしニンゲンはぴくりとも動かない。
仰向けに倒れたまま、視線は空へ向かったままで。


川 ゚ -゚)「お前……」

(%@ Д゚)「……俺はもう動けない。お前だけでも、逃げろ」



543 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:22:20.41 ID:tcaUXvNU0


ギコが横堀に見えた


544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:22:42.60 ID:+3xj7nt1O


ニンゲンは空を見上げたままそう言った。
後ろを振り返ると、もうすぐそこまで火の手が迫って来ている。

どういうことだ。
状況から考えるに、このニンゲンは私を助けようとしたのか?

ニンゲンが?
なぜ?


(%@ Д゚)「どうした、早く逃げろ」

川; ゚ -゚)「な……?」


ニンゲンの言葉に動揺する。
逃げろ?
どういうつもりだ。


川 ゚ -゚)(罠か……?)


私が逃げようとして背中を向けた途端に切りかかってくるつもりだろうか。
……いや、それならば何故私が気を失っていた時にトドメを刺さなかったのだ。



548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:23:53.95 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)「貴様……どういうつもりだ」

(%@ Д゚)「……どうもしないさ。戦争が終わったのに、これ以上誰かを殺す必要はない」


……このニンゲンは、エルフの女王を倒し、戦争を終わらせたと思いこんでいるのだ。

愚かな。
女王はまだここにいるというのに。
殺したのは一人のエルフの少女だというのに。


川 ゚ -゚)(……そうだ。コイツがシィを殺したんだ)


シィは優しい少女だった。
なのにこのニンゲンはシィを殺した。

忘れかけてきた憎しみが沸々と湧き上がってくる。
ニンゲンは相変わらず動かない。
ならば、なんとか殺せるだろう。


川 ゚ -゚)「貴様が何を考えているか知らんが、私は貴様を許す訳にはいかんのでな」

(%@ Д゚)「……」



551 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:25:21.67 ID:+3xj7nt1O


(%@ Д-)「許されたいとも思わないさ。……俺は、人殺しだから」

川; ゚ -゚)「……!」


ニンゲンは目を閉じ、抵抗する様子も、私の言葉を否定する様子も見せなかった。
なんなんだ。

このニンゲンは、何を考えているのだ。


(%@ Д-)「恨み言も聞く。殺したきゃ早く殺せ。早くしないとお前が逃げられなくなるぞ」

川; ゚ -゚)「お前は……」


本当にニンゲンなのか。
私利私欲の為に他者を退ける醜い種族。
それがニンゲンではなかったのか。


わけがわからない。



553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:26:31.16 ID:+3xj7nt1O


ふと、シィの言葉が思い出された。


人間とエルフが仲良くしてる世界が、いつか訪れる。


その言葉を聞いた時は、面白いが、有り得ない事だろうと思った。
もしそんな世界が実現したとしても、それはずっと遠くの、千年以上先の事になると考えていた。

しかし、ニンゲン、人間がもっとまともな種族ならば、もしかしたらシィが言ったことも世迷い言ではないのかもしれない。


川; ゚ -゚)(だが……ニンゲンだぞ!?)


此度の戦争もニンゲンの領土的野心によって引き起こされた。
過去にだってニンゲンがエルフの住む場所を襲った例はいくつもある。

そのニンゲンが……


(%@ Д゚)「どうした。早くしろ」


このニンゲンか……?



554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:28:04.67 ID:+3xj7nt1O


川; ゚ -゚)(ダメだ……惑わされるな)


つい先ほどまで、私と本気で戦っていた相手だ。
殺し合いをしていた相手なのだ。

余計な感情はいらない。
こいつは敵だ。



刹那、大きな音がして地面が揺れた。
音の方向に目をやれば、一本の燃え盛る大木が倒れて道を塞いでいるのが見えた。


川; ゚ -゚)(しまった……!逃げ道を塞がれた!?)


ニンゲンがやったのか?
いや、しかしニンゲンは全く動いていない。
炎のせいで自然と倒れたのだろう。

いずれにせよこのままで私も炎に飲まれて死んでしまう。
鎮火しようにもそんな魔力はない。


川 ゚ -゚)(万事休すか……)



555 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:28:25.76 ID:tcaUXvNU0


クーどんだけ人間嫌いなんだ


559 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:30:14.40 ID:+3xj7nt1O


(%@ Д゚)「……だから、早く逃げろと言ったんだ」


ギシギシと音を立てながらニンゲンが立ち上がった。
ぎこちない動きで剣を握り、鋭い眼光がこちらを捉える。

……戦うつもりか?
やはり、さっさと殺しておくべきだったか。


川 ゚ -゚)(……上等だ)


どうせこのままでは命を落とすのだ。
ならば、せめて最期はこのニンゲンに一矢報いてやりたい。


(%@ Д゚)「……」


ニンゲンは体のあちこちから火花を散らしながら、溶けかけた腕で剣を構えた。
限界が近いのはあちらも同じようだ。

武器も魔力もないが、この相手に遅れを取るほど堕ちてはいない。



563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:31:42.56 ID:+3xj7nt1O


(#%@ Д゚)「おおおおぉぉおお!!!」


咆哮と共に駆けてくる。
いや、駆けると言うにはあまりにも鈍重すぎる動きだ。

これなら簡単にかわせる、かわした後にいくらでも攻撃することができる。




川; ゚ -゚)「な――――っ!?」


しかしニンゲンは、私の横を走り抜け、さらにその先へ向かった。
そこにあるのは先ほど倒れてきた大木。
ごうごうと音を立てて燃える木に向かって一直線に駆けていく。


(#%@ Д゚)「だらぁぁぁぁ!!」


そのまま、その木に向かって剣を振り下ろした。
しかし、力が入らないのか、斬ると言うよりは叩きつけるといった感じで、結局木の焼け焦げた表面が少し削れただけだ。



566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:33:05.82 ID:+3xj7nt1O


(#%@ Д゚)「くっ……おぉぉぉぉ!!」


それでもニンゲンは、何度も何度も剣を振る。
皮膚が火で溶けて、金属の部分が剥き出しになった腕で。

私はただそれを呆然と見ているだけしか出来なかった。

無意味な行動を繰り返すニンゲン。
それをただ見ている私。

なんなんだ。
これは。


(#%@ Д゚)


なんなんだ。
こいつは。


川 ゚ -゚)


なんなんだ。
私は―――



572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:34:49.45 ID:+3xj7nt1O


(#%@ Д゚)「これで……」


ニンゲンが跳躍する。無残に焼け焦げた、いつ壊れてもおかしくない脚で。
さほど高さは無かったが、普通の人間が跳べるであろう高さはゆうに越えている。


(#%@ Д゚)「どぉだぁぁぁぁ!!」


落下の力を利用し、そのまま剣を振り下ろす。
鈍い音がして、何かが宙を舞った。


川; ゚ -゚)「あ……」



ニンゲンの右腕が、剣を握ったまま落ちてきた。
無機質なまま転がるそれは、しっかりと剣の柄を握りしめて……


(#%@ Д゚)「ちくしょうがぁぁぁ!!」


ニンゲンは剣を失ってもなお、木を殴り、蹴り、ひたすらにがむしゃらな攻撃を続ける。
燃え盛る大樹はビクともしないのに、それ以上続けたところで意味は無いのに。



575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:36:05.03 ID:+3xj7nt1O


川; ゚ -゚)「もうやめろ!そんなことしても意味はないだろ!!」


そう、意味なんかないのだ。
ニンゲンがあの大樹を壊したところで、何があるのか。

あの様子では、ニンゲンももうもたない。
道を開いたところで、無事に生きて帰れるわけがない。


(#%@ Д゚)「意味……?そんなの知るか!!」

川; ゚ -゚)「なっ……」

(#%@ Д゚)「俺はアンタを助ける!例えこの身がどうなろうともなぁ!!」



助ける……?
先程まで殺し合いをしていた私を?
エルフである私をか……?


(#%@ Д゚)「戦争は終わった!もうエルフを傷つける事はない……!」


(#%@ Д゚)「あいつが…………それを望んだんだっ!!」



578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:37:08.82 ID:+3xj7nt1O


バチィッ!と何かが弾ける音がした。
音のした方を見れば、ニンゲンの右足から煙が上がっている。


川; ゚ -゚)「あいつ……?」

(#%@ Д゚)「ああ……そうだ……っ!」


ニンゲンは再び拳を振り上げる。
が、踏ん張れずに右膝が崩れ、そのまま倒れてしまった。


(#%@ Д゚)「あいつは願っていた……!エルフの女王は……!」


エルフの女王……?
シィのことか……?


(#%@ Д゚)「戦争を終わらせるために、自らの命を捨てた女王は……!」



(#%@ Д゚)「これ以上……エルフが傷つかないことを……!!」



581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:38:10.55 ID:+3xj7nt1O


ニンゲンはなんと言った?
戦争を終わらせるために、シィが自らの命を捨てたと……?


(#%@ Д゚)「だからっ!俺はあんたを助ける……!!」


そうか、そういうことか。
シィは、この馬鹿げた戦争を終わらせるために、自らを女王と称し、そして死んでいったのだ。
私を……エルフを守るために。


(#%@ Д゚)「うぉぉぉぉぉぉ!!」


そしてニンゲンは、シィの言葉を、願いを受けて私を守ろうとしている。


単純なことだった。


ニンゲンは……いや、“人間”は、私の知る“ニンゲン”ではなかったのだ。



583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:39:06.94 ID:+3xj7nt1O


(#%@ Д゚)「ぬらぁぁぁぁぁ!!」


ふらふらと立ち上がり、ニンゲンは再び燃え盛る木に殴りかかろうとした。


(#%@ Д゚)「!」

川 ゚ -゚)「……もう、いい」


その手を、私は掴んでいた。
すでに皮膚は焼けただれ、金属ばかりが露出している。
火の近くにいたせいか、私の炎のせいか、かなり熱せられていた。


(%@ Д゚)「……はなせ」

川 ゚ -゚)「もういいと言ったんだ。これ以上は無駄だ」

(#%@ Д゚)「無駄かどうかはやってみなけりゃわかんないだろ!」

川 ゚ -゚)「頼む……もうやめてくれ」


これ以上は見たくなかった。
このニンゲンが自らを傷つけてまで私を助けようとするのは。

これ以上は、惨めな気分になる。



587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:40:13.15 ID:+3xj7nt1O


(#%@ Д゚)「このままじゃ……死ぬだけだぞ」

川 ゚ -゚)「……」


それは承知だ。
だが、ここでニンゲンが私を助けようとすれば、私の誇りが―――エルフの女王の誇りが穢される。

ならば、誇りを持ったまま死にたい。
無様な生よりも、誇り高い死を……。


シィのように、エルフの女王として、民の為に命を落とすのだ。
誇りを守るために。


川 ゚ -゚)「ニンゲン。私は―――」




エルフの女王だ。
だから、戦争は終わっていない。
この場で私を殺してくれ。


そう、言おうとした時だった。



588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:40:52.69 ID:EzkX2EWk0


おもしろい


590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:41:14.28 ID:+3xj7nt1O


川; ゚ -゚)「っ!?」


向かい合った反対側。
ニンゲンの背後。

燃え盛る木がもう一本、今にも倒れようとしていた。


川; ゚ -゚)「くっ……!!」


握ったニンゲンの左腕を強く引いて後ろへ。
代わりに自分の体が先ほどまでニンゲンのいた場所へ……。


(;%@ Д゚)「―――――!!!」


ニンゲンが何かを言ったが、声は届かない。
倒れてくる木は遠目に見た時よりもずっと大きく、太い。

それもそうだ。
始原の世界樹の周辺に生える木は、どれも樹齢千年を越えているのだから。



594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:42:12.12 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)


木が落ちてくる。
これは当たったら死ぬだろう。

まあいい。
仇敵を助ける……いや、あのニンゲンも長くはもたないだろうから死期を少し遅らせただけか。

それでも、自分の尊厳を守ったまま死ねる。
生まれ育ったこの森で死ねるのだ。



思い残すことは何もない。






川 ゚ -゚)(ツン、デレ、シィ……そして勇敢に戦い散っていった同胞達。私もお前達のもとへ行くぞ)





596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:43:06.65 ID:+3xj7nt1O







私は木に押しつぶされた








そのはずだった







598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:44:08.92 ID:+3xj7nt1O


川; ゚ -゚)「!?」


頭上に落ちてきた大木は、突如地面から上がった水柱に弾かれ、向こう側へと落ちていった。


一体何が起こったのだ。
まさか、ニンゲンが魔法を……?

いや、まさかそんなはずがない。


しかし、地面にはしっかり魔法陣が浮かび上がっている。


川; ゚ -゚)(一体なぜ……?)


(%@ Д゚)「なんだこりゃあ……辺りの火があっという間に消えちまった」


川 ゚ -゚)「……!」



602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:45:14.02 ID:+3xj7nt1O


ああ、そうだった。
始原の世界樹を守るために、ここには水の魔法陣を張ったのだ。

シィが言い出したことだった。
私が、生きることを願った彼女が……。


川 ゚ -゚)(……まだ、死ぬには早いということか)


シィはただこの世界樹を守るために魔法陣を張ろうと言ったのか。
それとも、こうなることを見越して、私を守るために魔法陣を張らせたのか。

そうならば、本当に、賢い娘だ。


(%@ Д゚)「魔法って……すげぇな」


ニンゲンの呟きに、思わず頷いてしまった。
私達にとって魔法は当たり前な物なのに。

それでも、すごいものだと、神秘的な物だと思ってしまったのだ。
今ならば、ニンゲンが魔法に憧れる気持ちがわかる気がした。
そして、魔法に憧れて科学を生み出したことも―――



605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:46:57.60 ID:+3xj7nt1O


背後でガシャンと何かが崩れる音がした。
ニンゲンが倒れた音だった。


(%@ Д゚)「……まぁ、よくもった方だな」


痛みや苦しみは感じないのか、ニンゲンは淡々とした表情で話す。
もげた腕から火花が散り、焼けただれて露出した場所からは金属が見えている。


川 ゚ -゚)「……」

(%@ Д゚)「すっかり焼けちまったが……緑の中で死ぬのも悪くない」

川 ゚ -゚)「お前は……これでいいのか?」

(%@ Д゚)「何がだ?」


川 ゚ -゚)「お前はエルフの軍を倒した英雄だ。それを誰にも讃えられることなく死んでいくんだぞ」

(%@ Д゚)「……英雄、ね」



607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:48:06.33 ID:+3xj7nt1O


(%@ Д゚)「俺は英雄なんかじゃない。……ただの人殺しさ」

川 ゚ -゚)「……そうか。……人殺しか」


人間達にとっては、きっとこのニンゲンは英雄なんだろう。
だが、私達にとってはただの人殺しだ。

ニンゲンは、自分が人殺しだと言った。
このニンゲンは……いや、この人間もきっと戦争は嫌いなのだ。


(%@ Д゚)「エルフの女王が言ったんだ。『あなたはかわいそうな人間だ』って」

川 ゚ -゚)「……」

(%@ Д゚)「……エルフを大勢殺した人殺しに、かわいそうな人間だなんてな」


川 ゚ -゚)「……シィは、お前をただの人殺しだと思っていなかったんだ。
     お前も、戦争に巻き込まれたかわいそうな人間だと思っていたのさ」

(%@ Д゚)「……戦争なんて、しなきゃよかった」


(%@ Д゚)「戦争に参加して……ただ自分の正義を貫こうとしたら、多くの罪のないエルフを殺していた」



611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:49:28.14 ID:+3xj7nt1O


(%@ Д゚)「俺のせいで、罪もないエルフ達が大勢死んだんだ。人殺しじゃなかったらなんなんだ」

川 ゚ -゚)「……ならば、愚か者だな。……お前も…………私も」


川 ゚ -゚)「私は私の正義のために、人間を殺した。お前はお前の正義のために、エルフを殺した」

川 ゚ -゚)「互いの正義は、間違いなく正義だったのだ。……その正義を狂わせたのが、戦争だ」


誰が始めた戦争かは、私にはもうわからない。
だが、どちらも愚かだったことは確かだ。

どちらかが賢ければ戦争にはならなかった。
例えば、エルフの女王がシィのような賢い娘だったら……


川 ゚ -゚)(……仮定の話をしても仕方はない、か)

(%@ Д゚)「……本当、馬鹿だよな」



614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:50:48.00 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)「人間。お前はもう死ぬのか」

(%@ Д゚)「ああ。もう長くはない」


川 ゚ -゚)「そうか……」


川 ゚ -゚)「……だが、私は生きる」

川 ゚ -゚)「これから先、百年、二百年と生きる」


シィが望んだのだ。
私の生を。

その生で私ができることはないか。
いや、あるはずだ。
シィが望んだ世界のためにできることがあるはずだ。


川 ゚ -゚)「そして私は……こんな事が二度とないように、語り継いでいく」

(%@ Д゚)「……」



619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:52:09.02 ID:+3xj7nt1O


(%@ Д-)「そうか……」


人間は小さく笑った後、目を閉じた。
もう限界が近いのだろう。


川 ゚ -゚)「もう逝くのか?」

(%@ Д-)「……みたいだな」

川 ゚ -゚)「……最期に、お前の名を聞いてもいいか?」

(%@ Д゚)「ギコ……ギコ=マーシアス」

川 ゚ -゚)「そうか、ギコか……。私はクーだ。……覚えておいてくれ」

(%@ Д-)「ああ……覚えておくよ」


人間の声が徐々に小さくなっていく。
ギシギシと音を立てながら、人間の左手が空に向かって伸びる。


(%@ Д゚)「綺麗な空だ……」

(%@ Д-)「明日は……晴れ……だな」



624 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:53:49.65 ID:+3xj7nt1O


川 ゚ -゚)「……」


川 ゚ -゚)「ああ……、きっとそうだ」


私の言葉に、人間は小さく微笑むと、それきり動かなくなった。


川 ゚ -゚)「……人間は、皆醜くて、愚かな生き物だと思っていた」


結局、自分が本物の女王だと言うことはなかった。

言えなかったのだ。
私には、エルフの女王を名乗る資格など、とうに無くなっていたのだから。


川 ゚ -゚)「もしかしたら……美しい空の下、緑に囲まれたこの場所で、お前と話す未来があったのかもしれないな」


私は振り絞った魔力で治癒の魔法を使い、自分の傷を癒やし、立ち上がった。
そして、森の奥へとゆっくり歩を進める。


川 ゚ -゚)「……明日は、晴れるといいな」


暗く厚い、どんよりとした雲に覆われた空の下で―――



626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:54:41.05 ID:+3xj7nt1O



―――――――
――――


亡国の女王は、それから燃え尽きた森を背中に、延々と荒野を歩き続けた。
無人の荒野を、シィが語ったドクオという男と逆の方向へと歩き続けた。
途中、人間達が使ったであろう、野営地を見つけた。
生き残りは去った後なのか、それとも、全員戦地で死んだのか、人の気配は無く、片付けられることも無く様々な物資が吹き晒されていた。
簡素なテントの中には、戦地、我々の森へ入る前に書いたであろう、家族に向けた手紙や、日記が散乱していた。

女王、いや、クーは、簡素なテントの中で、静かに手を合わせた。



――それから、クーの消息を知る者は居ない。





ただ、帝国の公の書物にはこの戦争でエルフの王族は根絶したと記されている。



630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:55:42.26 ID:+3xj7nt1O


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ホライゾン=ガストラ帝王は、エルフ軍壊滅の報せを聞き、盛大な宴会を開き、酒池肉林の宴を開いた。
が、その宴の最中、戦争の最中消失したはずのモララー=ボナパルト少尉、そして研究者のアサ=ペロリストが軍隊内の有志を引きつれクーデターを起こす。
泥酔状態のまま、ホライゾン帝は被弾し、絶命。
また、その時忠臣、フィレンクト=ガラードもホライゾン帝王を庇い、絶命した。
その場に居た者によると、十六発もの弾丸をその身体で受け止め、ホライゾン帝を死守しようとしたと言う。

この時のクーデターはエルフの森での生き残りを中心とし、なんと軍隊の約八割が賛同したという。
モララーは後に「戦友ギコの名の下にあれだけの人間が集った。私だけの力では無い」と語っている。


モララー隊長はその後国民の支持も得、ホライゾン帝に嫡男が居なかったことも追い風となり、帝国の統治者となる。
モララーはホライゾン帝が出していた、エルフの森の資源徴収命令、及びエルフ民の保護令という名の、実質的な奴隷化政策を撤廃。
都市開発を緩和し、資源を有効に活用するために、エルフの森の再生を政令として出した。

また、モララーはエルフの保護、帝国への移住を推奨したが、結局保護を受けたエルフは三桁を越えることは無かった。
一説によると姿を隠して人の世に溶け込んでいるというが、真相は不明である。



――ガストラ帝国の歴史、第六巻 二百四十項――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:58:09.91 ID:+3xj7nt1O


そして、時は流転し―――


“戦争”から半世紀後


ガストラ帝国 郊外の村

人工的な空間ではあるが、自然に包まれた公園。
そこで、フードをすっぽりと被った、怪しい人物が子供達に囲まれている。
フードの人物は竪琴のような物を持ち、小さな鉢を置いていることから、吟遊詩人であることが察して取れる。


(::/ )「教科書にはそう書いてあるがな、本当は違うんだぞ少年」

( ><)「そうなんですか?」

(::/ )「ああ、魔導アーマーなんてぜんぜん活躍しなかったんだぞ、本当は半身半機の兵士が大活躍したんだ」

( <●><●>)「モララー王の英雄譚であることはわかっています」

(::/ )「なかなか鋭いじゃないか少年。だが惜しかったな。今はもうヨボヨボの爺さんの話なんて聞いてもつまらんだろう。
     アイツの英雄譚は腐るほどあるしな。その友人の話だ」

( ><)「友人?アサピーさんですか?」

(::/ )「いや、ギコという男の物語さ」



640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 02:59:57.37 ID:+3xj7nt1O


前置きを終えると、フードの人物は竪琴に手を掛け、その、森で一人朽ちた、知られざる英雄の物語を朗々と歌った。
竪琴から美しい音が流れる。フードの人物の口から物語が紡がれる。
少年達は、冒険譚に眼を輝かせ、英雄の死でそのつぶらな瞳を潤ませる。

そして、琴が鳴り止むと、拍手し、鉢に小銭を入れた後、決まって最後にこう聞く。


( ><)( <●><●>)「エルフは、エルフの女王はどうなったんですか!?」

フードの人物がその答えに応えようとした時、一陣の風が、フードを捲りあげた。



川 ゚ -゚)「さぁな、案外、人間と仲良くしてるかもしれない」





――空は、美しく晴れ渡っていた



―Fin―



641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:00:48.37 ID:Biv3RKdJO


おつ


642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:01:19.68 ID:EzkX2EWk0


面白かった


643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:01:30.79 ID:h8OWjMhS0


乙、久々に良いブーン系を読ませてもらった


644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:01:42.25 ID:hhqvuPC90



個人的にクーデターのあたりも書いて欲しかった

なんにせよ荒らしに負けずよく最後まで投下したな


面白かった


645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:02:06.67 ID:ftnkZIjs0


乙!綺麗に終わったな


646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:03:37.12 ID:nZQNyOzo0





647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:03:55.16 ID:q5ym4MNJ0



やっと寝れる



649 : ◆4br39AOU.g 2012/11/08(木) 03:04:36.51 ID:+3xj7nt1O



諸君、ブーン系タッグバトルというのをご存知かね?
そう、半年ほど前に行われたイベントだ


……はい、ブーン系タッグバトル参加予定だった作品です
制作は( ^ω^)が世界樹の迷宮を踏破するようですの作者と、私精霊使いでお送りしました

長時間の投下に付き合っていただきありがとうございました!
もし質問等あればお答えしますー



650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:05:47.65 ID:hhqvuPC90


エルフの国がどうなったのか


652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:08:03.97 ID:+3xj7nt1O


>>650
女王はいなくなりましたが、森は残ってます
人間の国に住んでるエルフは少数いますが、一応焼け残ったエルフの森とそこに残ったエルフで国が成り立っていると考えていただければ



654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:13:04.49 ID:6Bp39Poei


(゚、゚トソン そのー・・ 動物とか、好きなんですかね?

(゚、゚トソン ア から始まって カ で終わるアレとか…


656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:22:48.41 ID:+3xj7nt1O


>>654

ああ、アオリイカ美味しいよね



658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 03:32:06.44 ID:AD/H7y9W0





661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 04:57:56.87 ID:oj/Shk7L0


面白かった乙


662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 05:10:16.14 ID:Lk2HTFfkO


眠れなかったじゃねぇか、おつ


663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 05:34:06.97 ID:eEVXPFwx0




ベルセルク思い出した


664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/08(木) 05:37:45.89 ID:EY/PddFPP


睡眠時間を削るに値するいいモノを読ませてもらった乙





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[ 2012年11月08日 21:57 ] カテゴリ:2ch VIP SS | TB(0) | CM(0)
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